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気まぐれ本虫―きまぐれぼむ―
蔵書を気まぐれに紹介する、 エッセイ風味雑感 and 備忘録
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 ■ シャーロック・ホームズの愛弟子
シャーロック・ホームズの愛弟子シャーロック・ホームズの愛弟子
ローリー・キング/集英社 1997-06
定価:860円

!! ネタばれあり
 さて、今回はホームズパロディ。パロディとは言っても主人公はメアリ・ラッセルという(この作品の時点では)少女で、日本語版では計五冊、原書ではすでに八冊が出版されているシリーズ。この本はそれの第一弾。
 ちなみにこちらが原書。
The Beekeeper's ApprenticeThe Beekeeper's Apprentice
Laurie R. King/Bantam Books (Mm) 1996-08

 直訳すると「養蜂家見習い」。もちろん、BeeKeeper=ホームズなんだけど。聖典でホームズが「引退したらミツバチでも飼おっかな」と言ってる、その引退後を書いたパロディ……なんだろうか。うーん。パロディともちと違うような。
 探偵を引退してサセックスに移り住んだホームズのところに、おばの家から逃げ出したラッセルが転がり込む形に。

 ミステリとしてはとても面白い作品。筋道もきっちりとしていて、伏線もちゃんと回収されている。作者の知識も相当なもので、ミステリ読みつつお勉強もできちゃう一石二鳥。薀蓄が嫌いな人は面白く感じないかもしれないけど、私は読んでいてとても楽しめた。まあ、読んでいるうちにそっちの方に意識やられちゃって、「で、事件はどうなってたっけ」と忘れてしまうことも多々あったが。
 ただ一つ、ただ一つだけ偉そうに文句を言うとすれば、ホームズにLOVEはいらない、ということ。別に作品中に恋愛模様が描かれているのは構わない。それがミステリに彩を与えることにもなるから。でも、ホームズ自身にLOVEはいらないよ!と最後まで読んで悶絶した。ど、どうしてそうなっちゃうの?とパニックになったわけだ。
 ラッセル自身は魅力的な人なのにもったいないなあ、というのが正直なところ。ホームズのパートナーとしてではなく、ホームズから搾り取れるものはとことん搾り取って、全部私の肥やしにしてやるわよ!という心意気が最初の頃感じられただけに、こんな風に丸く収まってしまうのは非常にもったいない。
 というより、ホームズの相棒はワトソンでしょう。ワトソン以外にはありえないよ。そんな頭の固さを披露しておこう。

 ところで、これを読んだ数年後、オンラインで「ドリーム小説」というものを知り、それ以来私の中でこの作品は「ホームズのドリーム小説」という位置づけに。才色兼備な女の子がホームズと結婚して……って、まさしくドリームなのではないかと。
 もう一冊、こちらは日本人作家さんの作品でいわゆるトリップドリームものがあるのだが、それはまた次の機会に。
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 ■ 緋色の研究
緋色の研究
コナン・ドイル/新潮社 1953-05
定価:380円(税込)

!! ネタばれあり
 ホームズを語りだすと止まらないので、聖典はこの一冊こっきり紹介。聖典はあちこちの出版社のものを所有しているんだけど、読み直す時はたいていこの新潮文庫のものを読み返している。ただ単に故・延原氏の翻訳が好きなだけで他に理由はない。残念なのは、新潮文庫には「シャーロックホームズの叡智」という聖典にはない巻があるということか。とは言っても、内容は分量の関係で収録しきれなかった短篇が入っているだけなので、各短篇の収録巻名を覚えていれば何も問題はない。

 さて、緋色の研究は記念すべきシャーロック・ホームズシリーズの第一弾である。そりゃもう心が躍りますとも。最初にきちんとホームズとワトソンの出会いが描かれているんだから。
 偶然会った元助手スタンフォード青年に連れられて、ワトソンは古巣の聖バーソロミュー病院へ。そこで、新しい血液判定法を見つけておおはしゃぎの男と出会う。それが何を隠そう、シャーロック・ホームズ。
"You have been in Afghanistan, I perseive."(アフガニスタンにいってられましたね)
 そうして握手を交わした二人は、ベイカー街221Bに下宿をすることになる。そう、あのハドソン夫人の下宿に。そうこうしているうちに事件が持ち込まれる。現場の空き家に残された手がかりは、足跡と壁に血で書かれた"RACHE"の文字のみ……という筋書き。レストレード、グレグスン両警部も登場。熱い推理(「Rachelだ!」とか)を披露してくれる。
 何回、何十回と読み返しても、このレギュラーメンバーが顔を合わせる空き家のシーンはぞくぞくする。「さあ、ホームズが始まるよ!」という興奮が抑えられない。まあ、「シャーロック・ホームズ」のお話なので、スコットランドヤードチームは敗れてしまうのだけど……。
 前半はホームズの華麗な(たまに矛盾点を含む)推理披露、後半は「なぜそのような事件に至ったのか」という物語。この方法は同じく長篇「四つの署名」、「恐怖の谷」でも使われている。ドイルの得意な方法なんだろうか。
 当時の偏見や新大陸の様子など、時代を感じさせる部分もあり、そんなにも長くないのでさらさらと読んで――いくと、重要な手がかりを逃してしまう寸法。初めて読んだ時、さっさと読んで最後に「えっ、えっ?」となったのも今はよい思い出。短篇ではさらに省略されまくっているので、推理しながら読もうとすれば、かなりの集中力が必要。でも、手の込んだトリックはほとんどないので、読みやすいといえば読みやすい。私が、手の込んだトリックよりも探偵が走り回っているミステリが好きなのは、間違いなくシャーロック・ホームズの影響がある。
 ところでこの作品、ホームズの失敗も描かれているんだなあ。ホームズの失敗といえば「五つのオレンジの種」や「黄色い顔」の"Kindly whisper 'Norbury'."が有名だけど、何がすごいって、しょっぱな第一弾から主人公に失敗させるドイル氏……。普通、できねえずら、そんな恐ろしいこと。
 「捜査は一筋縄ではいかないよ」ということだろうか。肝に銘じておきます。

 最後に、色んな作品でちょっととろくさいおじさん、という描写の多いワトソンだけど、絶対にそんなことはないとここで主張しておく。
医者といえば、当時の階級でいえば中産階級の上位よ。元より、かなり頭がよろしいわけだよ。
 ただ、そのすぐ横に脳みそ使うのだけが生きがい!って変人がいるので、そんなに目立った人間に思えないだけだと。比較の問題。
 まさか、シャーロック・ホームズ最大のトリックは、この「ワトソンが一般人に見える」ではないのだろうか。

 ■ シャーロック・ホームズ 呪われた館
シャーロック・ホームズ呪われた館
ゲイリー・グレイディ/二見書房 1986-12
定価:1,950円(税込)

 古本屋で見つけてすぐさま買ってしまった。だってもう絶版なんだもの。しかも1000円。おおお、私には5000円出しても惜しくない代物だよ!と大興奮してしまった。さぞかし怪しい客だったろうと。

 スコットランドヤードの警官1ダースより役立つと評判のBSI(not シャーロキアン本部)一員となって事件を解決していくゲームブック。
 しかし、たかがゲームブックと侮ることなかれ。読み込んで、何度も事件をさらって、考えに考えてようやくクリアした。間違いなく、読み終えるのに一番頭を使った本だ。もちろん、それだけの時間をかけるだけの価値はある。
 内容は表題の「呪われた館の謎」他四篇の事件。読んでいるだけでもホームズの世界にぐんぐん引き込まれていく。私も初めはぱらぱらっと読むだけにしようとしたが、読んでいるうちにどんどん事件の真相が気になっていき、紅茶王殺害事件を三分の一ほど読み進めたところで頭を切り替えた。あとは前述の通り。
 「そんな時間はない」というせっかちさんは、読むだけでも十分楽しめると思う。ただ、地区ごとの情報が連続して書いてある形式なので、頭の中で整理しながら読まないとちんぷんかんぷん、いったいどんな事態なのかわからないのが難点か。でもゲームブックだものね。ゲームブックに慣れてない人は、かなりの時間がかかる可能性大。事実、私もゲームブックなんて、二十年ほど前に読んだゾロリ先生しかないだよ。
 そんなわけで、色んな意味で楽しめる一冊。
 また、謎を解く手がかりとして、当時のロンドン市街地図やロンドンタイムズなんて素敵なおまけもついていて、資料としての価値も高い。現在のロンドン地図と見比べて、変わったところを見つけるのもなかなか楽しい。
 さらにマニアックな楽しみ方として、随所に挿入されてるパジェット氏の挿絵を見つつ、「これはあの話の挿絵だな」と当てはめていく、という遊びも挙げておこう。各出版社から出されている聖典を辺りにちらかして、あれでもないこれでもないとパズルを完成させていく。なんて贅沢な時間の過ごし方だろう。

 シリーズとしては二作目で、第一作目「10の怪事件」、第三作目「死者からの手紙」は未入手。どこかないだろうかと、今日も古書店を巡る旅。

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