気まぐれ本虫―きまぐれぼむ―
蔵書を気まぐれに紹介する、
エッセイ風味雑感 and 備忘録
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■ 緋色の研究
緋色の研究 コナン・ドイル/新潮社 1953-05 定価:380円(税込) |
!! ネタばれあり
ホームズを語りだすと止まらないので、聖典はこの一冊こっきり紹介。聖典はあちこちの出版社のものを所有しているんだけど、読み直す時はたいていこの新潮文庫のものを読み返している。ただ単に故・延原氏の翻訳が好きなだけで他に理由はない。残念なのは、新潮文庫には「シャーロックホームズの叡智」という聖典にはない巻があるということか。とは言っても、内容は分量の関係で収録しきれなかった短篇が入っているだけなので、各短篇の収録巻名を覚えていれば何も問題はない。
さて、緋色の研究は記念すべきシャーロック・ホームズシリーズの第一弾である。そりゃもう心が躍りますとも。最初にきちんとホームズとワトソンの出会いが描かれているんだから。
偶然会った元助手スタンフォード青年に連れられて、ワトソンは古巣の聖バーソロミュー病院へ。そこで、新しい血液判定法を見つけておおはしゃぎの男と出会う。それが何を隠そう、シャーロック・ホームズ。
"You have been in Afghanistan, I perseive."(アフガニスタンにいってられましたね)
そうして握手を交わした二人は、ベイカー街221Bに下宿をすることになる。そう、あのハドソン夫人の下宿に。そうこうしているうちに事件が持ち込まれる。現場の空き家に残された手がかりは、足跡と壁に血で書かれた"RACHE"の文字のみ……という筋書き。レストレード、グレグスン両警部も登場。熱い推理(「Rachelだ!」とか)を披露してくれる。
何回、何十回と読み返しても、このレギュラーメンバーが顔を合わせる空き家のシーンはぞくぞくする。「さあ、ホームズが始まるよ!」という興奮が抑えられない。まあ、「シャーロック・ホームズ」のお話なので、スコットランドヤードチームは敗れてしまうのだけど……。
前半はホームズの華麗な(たまに矛盾点を含む)推理披露、後半は「なぜそのような事件に至ったのか」という物語。この方法は同じく長篇「四つの署名」、「恐怖の谷」でも使われている。ドイルの得意な方法なんだろうか。
当時の偏見や新大陸の様子など、時代を感じさせる部分もあり、そんなにも長くないのでさらさらと読んで――いくと、重要な手がかりを逃してしまう寸法。初めて読んだ時、さっさと読んで最後に「えっ、えっ?」となったのも今はよい思い出。短篇ではさらに省略されまくっているので、推理しながら読もうとすれば、かなりの集中力が必要。でも、手の込んだトリックはほとんどないので、読みやすいといえば読みやすい。私が、手の込んだトリックよりも探偵が走り回っているミステリが好きなのは、間違いなくシャーロック・ホームズの影響がある。
ところでこの作品、ホームズの失敗も描かれているんだなあ。ホームズの失敗といえば「五つのオレンジの種」や「黄色い顔」の"Kindly whisper 'Norbury'."が有名だけど、何がすごいって、しょっぱな第一弾から主人公に失敗させるドイル氏……。普通、できねえずら、そんな恐ろしいこと。
「捜査は一筋縄ではいかないよ」ということだろうか。肝に銘じておきます。
最後に、色んな作品でちょっととろくさいおじさん、という描写の多いワトソンだけど、絶対にそんなことはないとここで主張しておく。
医者といえば、当時の階級でいえば中産階級の上位よ。元より、かなり頭がよろしいわけだよ。
ただ、そのすぐ横に脳みそ使うのだけが生きがい!って変人がいるので、そんなに目立った人間に思えないだけだと。比較の問題。
まさか、シャーロック・ホームズ最大のトリックは、この「ワトソンが一般人に見える」ではないのだろうか。
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みや/女性

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本のタイトルを覚えないがゆえに、持っている本を再び買ってしまうという悲しい脳みその持ち主。
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