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気まぐれ本虫―きまぐれぼむ―
蔵書を気まぐれに紹介する、 エッセイ風味雑感 and 備忘録
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 ■ ビルギット
ビルギット
グートルン・メブス/国土社 1986-12
定価:950円(税別)

 児童書。脳腫瘍になったお姉ちゃんを見続けた幼い妹の話。
 小学生の時に読んで、ずっと頭から離れなかった一冊。親切な方がタイトル教えてくださって、先日ようやく手に入れることができた。
 以前読んだ時になぜ頭から離れなかったかというと、これがあまりにも辛い内容だから。その頃、脳みそに腫瘍ができるということすら知らなかった私は、これを読んでめちゃくちゃ驚いたもんだ。読んでからしばらくは、自分もそうなんじゃないかと心配で眠れなかった。(その後十ン年を経て、本当に疑いがあってCTを撮る羽目になったんだが)
 私的に、ガンの中で一番怖いのは脳腫瘍だ。それは仕事柄かもしれないし、趣味でやってる創作のせいかもしれない。でも、どちらにしろ、またどちらでなくとも、脳が腫瘍に冒されるっていうのは怖い。ものすごく怖い。朝方来る頭痛は怖いというよ。
 そんな怖い怖いというイメージのある病気だけど、久しぶりに読み直して、恥ずかしながらぼろぼろ泣いた。昔は泣かなかったのに、今読んで、辛すぎて涙が止まらなかった。もうラストシーンなんて泣きすぎて読めない。ずーずー鼻鳴らして、タオルで顔拭きながら読んだ。こんなに泣いたのは、最近じゃ実生活でもとんとない。
 何が辛いって、主人公である妹が、さっぱり何もわかってないことだ。それゆえにすごく無邪気。お姉ちゃんの心配もしてるんだけど、それで皆が気持ちを傾けてくれることが嬉しかったり、親がお姉ちゃんにばかり構うのが(そりゃ大病だもの)寂しかったり。すでに結末を知っているだけに、主人公の行動や言動の一つ一つが目に止まる。実際に大人では考えられない行動、子供だからこそそう思うのだろうという感情、その全てをひっくるめて、主人公は主人公なりに、家族の現状、そして姉の病気と向き合っている。
 易しい言葉で淡々と綴られていることで、そういったものを一見見落としがちになるが、注意深く読んでみると、その裏に隠された深い意味に気付くことができるだろう。

 一月にも満たない短い闘病生活の果て、ビルギットは死んでしまう。ひどい言い方だが、この話ではそうなってよかったと思う。治りました、ハッピーエンドというのはあまりにも物語すぎて実感が湧かない。かといって、お涙頂戴感動ストーリーでないことも確か。泣いたお前が何を言うって思われるかもしれないけど。
 荒療治ながら「脳腫瘍っていうのはこんな病気なんだ」、「身近な人が死ぬっていうのはこういうことなんだ」ということを子供に植えつける本、というのが私の見解。絶版なのが本当に惜しい。
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